【解説】独占禁止法違反?TOHOシネマズにいったい何が?SNSに流れる誤解も含めてわかりやすく解説!

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事件を巡って生じている誤解

コロナ禍の業績低下を受け苦しい状況が続いていた映画業界。そのためこのような騒動が起きるのはかなり異例で、混乱している方も多く見受けられました。

そのため調査に踏み切った段階ということで具体的な配給会社名、作品名が出ていないことからもある誤解が生まれています。

それはTOHOシネマズがディズニー作品を公開しないのは今回調査が始まった独占禁止法違反と関係があるというもの。

まず個人的な見解ですが、今回の騒動とディズニーはあまり関係ないと思っています。

そもそも、ディズニー作品がTOHOシネマズで上映されなかったのは全興連の意向を反映したもので、TOHOシネマズに限らず他大手シネコン(TJOY系列、109系列、MOVIX系列)が同じく作品の上映を行っていませんでした。

そして今回容疑をかけられているのは先ほど解説した「私的独占」。この時点でTOHOシネマズがディズニー作品を独占して上映しようとしていたと言う事実があったとはあまり思えません。もしそれが事実なら、ディズニー側が「条件付きの取引を飲まなかったために上映しなかった」ということになりますから、ディズニー作品を上映しなかった他大手シネコンも同じように条件付きの取引を提示したという嫌疑をかけられるはずです。

ちょ、ちょ!いきなりわかりづらい理論を展開するな!

まぁ簡単に言えば、ディズニー作品関連でTOHOシネマズに独占禁止法違反の疑いがもたれるなら、同様に上映を行っていなかった映画館も同じく疑惑を持たれるはずってことだね。



まずそもそもコロナ禍でディズニー作品が多くの大手シネコンで上映されなかった理由を知らないという方も多いと思うので簡単に説明すると、このような感じです。

【ディズニー作品公開縮小までの経緯】

コロナの影響で「ムーラン」「ソウルフル・ワールド」を劇場公開から配信のみに。
(しかし、この時点で劇場CMの上映やグッズ製作は行われていた)

その後「ラーヤと龍の王国」は劇場&配信に。

劇場の利益が保証されないため、全興連がディズニーに抗議。

しかし、ディズニーは方針を変えず。

全興連は劇場のみの公開でなければ基本劇場公開はしないという方針に。
(絶対的なルールではないため、200館以上では公開に)

つまり、ディズニーは劇場で予告やポスターの掲示などの宣伝を行ってもらったものの、劇場公開をドタキャンして配信のみにシフトしたことが劇場からの反感を買うことに繋がったのです。

映画館での宣伝なんて映画の前にCM流すだけで無料だからいいのではないか、と思う方も多いかもしれません。ただ、実は事実上かなりの不利益を被っています

確かに映画館が予告編を流すこと自体に費用は発生しませんが、これは今後公開する映画を知ってもらうための初期投資のようなものでもあります。ただし、その公開が中止になり配信のみとなると、映画館は(劇場離れの要因になり得るためなるべく増やしたくない)配信サービスの会員増加のためにタダ働きしたということになってしまうのです。

その上、映画館はこの空いた時間に企業のCM(シネアド)などを流すことできれば、興行収入とは別に確実な利益を上げることも可能でした。

ディズニーは2作品もコロナで苦しい時期にそのような劇場公開ドタキャン→独占配信という措置を取った時点で、映画業界は怒り心頭だったわけですが、その後も懲りずに配信と劇場で同時公開するというハイブリッド形式を取ります。劇場公開ドタキャンからの独占配信よりはいくぶんマシですが、これも映画館で流すCMが配信サービス会員増加に繋がりますし、基本的にディズニーが得をするシステムになっています。

そこで全国の映画館、演芸場などが加盟する団体、全興連がディズニーに対し「映画館のみの上映を行わない場合基本的に劇場公開は行わない」という声明を発表しました。しかしその後も「クルエラ」「ジャングルクルーズ」「ブラック・ウィドウ」と劇場&配信の形が取られます。ただ、日本ディズニーも本国アメリカからの圧力や指示がありますから日本だけ特別な措置を取るというのも難しかったように思います。

その後、世界中が徐々にコロナから回復。実は本国アメリカなどでも配信&劇場公開というスタイルは海賊版の流出などで芳しい結果を残せず、本国アメリカでも劇場のみ先行での公開を行うようになりました。それに伴い日本でも劇場のみの先行公開が行われるようになり、事実上全興連の要求に従う形となって、TOHOシネマズ始め全国の劇場でディズニー配給作品が上映されるようになったのです。

最近では「ミラベルと魔法だらけの家」も373館とコロナ禍以前とほぼ変わらない公開規模となりました。(完全に回復とはまだ言えなさそうな面もありますが?)

つまり、TOHOシネマズなどでディズニー作品があまり公開されていなかったのは映画業界全体の不信感によるものだったというわけです。

その関係は徐々に回復してきていましたが、先日発表があったディズニーピクサー最新作「私ときどきレッサーパンダ」も劇場公開ドタキャン→ディズニープラス独占配信という形を取ってしまったため、また関係悪化に繋がってしまうかも…とまだまだ安心はできなさそうです。



まとめ:劇場と配給の関係を大きく変える岐路

コロナ禍はやはり映画館にとっても苦しい時期となっていました。行政からの休業要請、そしてそれに見合わない補助金。その中で少しでも多く利益を追求したいという思いが強くなってしまうのも必然なのかもしれません。

ただし、それの行き過ぎた結果が今回の事件。

まだ調査段階なので真相はわかりませんが、これが事実だった場合TOHOシネマズは大手シネコンである優位性のある立場を利用して比較的小規模な配給会社に圧力をかけたということになります。

また、このような行為はコロナ禍以前から行われていたとの声もあります。

果たして、最終的に公正取引委員会はどのような判断を下すのか。そしてその判断が今後の映画業界にどのような影響をもたらすのか。私個人としては、より理不尽のないフェアな環境が生まれることを切に願います。

コメント

  1. […] このように洋画作品の中核を担う存在であったディズニーだったが、コロナ禍以降はディズニーの配信サービスであるディズニープラスに特化する方向にシフト。ディズニープラス側に優位な条件を映画館に提示し、映画館側も抗議の声をあげるなど、少なくとも良い関係とは言えない状況が続いている。(詳しくはコチラの記事で解説しています。) […]

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