【解説】独占禁止法違反?TOHOシネマズにいったい何が?SNSに流れる誤解も含めてわかりやすく解説!

映画ファンのみならず大きな話題となった先週のニュース。

それは日本最大手のシネコンであるTOHOシネマズの独占禁止法違反容疑との報道です。

独占禁止法違反?私的独占?などイマイチ理解できない方も多いと思いますが、今回の事件を端的に説明すると、今回TOHOシネマズは自社の利益を追求した結果、一線(法律)を越えてしまった疑惑を持たれています。

違反をすると法人では5億円以下の罰金が課せられる独占禁止法ですが、今回はそれについての簡単な解説、そして一部で広がっているある誤解についても触れていこうと思います。
(※一部推測を含む部分もあります。ご了承下さい。)

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はじめに:独占禁止法の簡単な解説

まず前提として会社は基本自社の利益、業績を上げるために努力を重ねている一方で、その利益を追求し過ぎた結果消費者が大きく不利益を被るというケースがあります。

例えばこの事例を見て下さい。

例①
現在コンビニやスーパーで値段が異なるアイスクリームですが、1997年アイスクリームで有名な某H社(ハーゲンダッツ)はコンビニ、スーパーなどに関わらずどこも会社の希望する価格でなければ出荷しないと値段の拘束を行いました。

これはスーパー等での安売りによってH社の商品のブランドを落とさないための戦略ではあるのですが、これによって価格競争が止まり安く帰るはずのアイスクリームも高くなってしまうため消費者は不利益を被る形となります。

もう一つ例を見てみましょう。

例②
中学校の思い出としては定番の修学旅行。中学校は様々な旅行会社と交渉した上で1番コスパの良いプランを選ぶというのが普通ですが、この事例では中学校の交渉する旅行会社5社が手を組み、ある一定以上の料金から値下げをしないことで合意していました。

通常であれば旅行会社5社が自社を選んでもらおうと価格競争を行いますが、この場合競争する必要はなくなり確実に高い利益をあげることが可能になります。しかし、このケースも先ほどの例のように消費者が不利益を被る形となっていますよね。

つまりこのように、様々なメーカーや会社の競争を消費者が不利益を被る形で不正に制限する行為を行うことが、独占禁止法違反に当たります。

このような消費者の不利益を起こす行為を防止するのが独占禁止法で、これを主に取り締まるのが日本の行政である公正取引委員会です。

それを踏まえた上で今回の事件を詳しく見ていきましょう。



本題:今回の事件について

朝日新聞デジタルの記事内容を引用すると、

映画の配給をめぐり、配給会社に圧力をかけた疑いがあるとして、映画会社「東宝」の子会社で、全国で映画館を展開する大手「TOHOシネマズ」(東京)が、公正取引委員会から独占禁止法違反私的独占など)の疑いで調査を受けていることがわかった。

関係者によると、同社は取引先の映画配給会社に対し、他の映画館運営会社より優先して作品を配給することや、他社の映画館に配給しないことを要請。応じなければ、TOHOシネマズと取引できなくなることを示唆していた疑いがあるという。

公取委は、要請は市場から競合他社を排除するもので、独禁法の私的独占のほか、「拘束条件付き取引」などにもあたる恐れがあるとみて調べている模様だ。

映画配給会社に圧力か、TOHOシネマズを独禁法違反容疑で調査ー朝日新聞デジタル

このようになっています。

まず今回の違反は独占禁止法の「私的独占」に当たっていることが記されています。
先ほど紹介した例とはまた違う事例になりますが、こちらも詳しく見ていきましょう。

まず今回の騒動をより理解する上で、簡単に1つの映画が映画館で公開するまでの流れをざっと説明します。

映画が映画館で公開されるまでの流れ

①制作会社

皆さんが映画館で見ている劇場作品。このような映画作品作りはまず企画立案をするところから始まります。基本的にはプロデューサーや監督が企画を立て、その後映画制作会社に売り込んで出資を募ってもらい、そこから作品制作がスタートします。(配給会社が企画立案するケースもある)

この出資の部分ですが最近の作品のほとんどは製作委員会方式を取っています。製作委員会方式とは様々な会社が作品に対して出資をし、その利益を分配する仕組みなのですが、もし作品が赤字になった場合その負債リスクを減らす役割を果たしています。

②配給会社

そして出資を受け制作された作品は配給会社からの買い付け、または制作会社からの売り込みによって配給会社に公開権利を譲渡します。

そして配給会社は作品を映画館での公開するため、様々なシネコンに対して営業を行います。つまり配給会社は作品を作る制作会社と興行を行う映画館の橋渡しとしての役割を果たしています。

③映画館で上映

映画館は様々な配給会社との交渉(←ここが今回の重要ポイント!)の末、公開する作品を選び上映します。
TOHOシネマズと東宝のように同じ会社の系列であればここの流れはより円滑になります。

簡単にまとめると…

①立案された企画を元に協議の末、資金を募り制作会社が映画制作を開始
②買い付け、または売り込みによって配給会社が作品の権利を入手
配給会社が作品を様々な映画館に売り込み、交渉
④選ばれた作品が映画館で上映開始

映画公開までの流れをおさらいした上で今回の事件について詳しく見ていきましょう。



TOHOシネマズに持たれている疑惑について解説

まず引用した記事によると今回TOHOシネマズは独占禁止法の「私的独占」低触の疑いがかけられているのですが、この「私的独占」については独占禁止法2条5項に記載されています。


この法律において「私的独占」とは、事業者が、単独に、又は他の事業者と結合し、若しくは通謀し、 その他いかなる方法をもつてするかを問わず、他の事業者の事業活動を排除し、又は支配することにより、公共の利益に反して、 一定の取引分野における競争を実質的に制限することをいう。

引用元:私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律– e-Gov法令検索 – 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ

条文なので小難しい文章ですが、今回の騒動に当てはめて説明してみます。
まず先ほど触れたポイントの通り、この騒動の火種は配給会社と映画館の交渉の間にあります。

その交渉の中で、ニュース記事にも記載があった通りTOHOシネマズは配給会社に対して「他の映画館運営会社より優先して作品を配給することや、他社の映画館に配給しないことを要請」した疑いがかけられています。
他の事業者の事業活動を排除する、つまりある特定の作品に対してTOHOシネマズは他の事業者(他の映画館)を排除するために「自分の映画館だけで上映する」ことを要求したことが騒動の発端です。

ただし、この要求のみでは独占禁止法に問われることはありません。なぜなら、通常であれば配給会社にはこの要求を飲むか飲まないかの選択肢があるからです。しかし、今回TOHOシネマズは「(その要求を飲まない限り今後)取引できなくなることを示唆した」疑いが持たれています。もしそれが事実であれば排他条件付取引と言って、簡単に言ってしまえば脅しのようなもので、取引相手は選択肢を失ってしまいますから、独占禁止法違反が確定する決定打となってしまいます。

そして、このようにいわゆる脅しのような拘束条件をTOHOシネマズ側が提示できるということは力関係的にはTOHOシネマズが優位、つまり比較的小規模な配給会社がこのような理不尽な取引を提示され、泣く泣く飲むしか選択肢がなかったということが推測できます。(まだ調査段階なので具体的な作品名は伏せますが、おそらく今回の騒動に該当するであろう作品は小規模配給作品が主でした)

なんなの!わかりやすく解説とか言ってたのに、文字ばっかりでわかんない!

ご、ごめんね…。それではいらすとで説明しますね。

やや難しい説明になってしまったので簡単にイラストやで説明するとこのような形になります。

今回の騒動における交渉のイメージ(※あくまでもイメージです)

配給会社
配給会社

御社の劇場でコチラの作品上映いかがでしょうか?

映画館
映画館

いいよ、でも他の劇場での上映はあまりしないで欲しいな。

配給会社
配給会社

え、ええと…それは困ります…より多くの方にお届けしたいので…

映画館
映画館

ふーん、じゃあ君の会社は今後ウチと取引しないってことでいいかな。

配給会社
配給会社

ちょっと、お待ちください!いくらなんでもそれは…

映画館
映画館

笑顔(圧)

配給会社
配給会社

わ、わかりました…

次のページでは今回の騒動を巡って生じているある誤解について解説します。

コメント

  1. […] このように洋画作品の中核を担う存在であったディズニーだったが、コロナ禍以降はディズニーの配信サービスであるディズニープラスに特化する方向にシフト。ディズニープラス側に優位な条件を映画館に提示し、映画館側も抗議の声をあげるなど、少なくとも良い関係とは言えない状況が続いている。(詳しくはコチラの記事で解説しています。) […]

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