【解説】全興連必死の訴えも届かず…。厳しい休業要請で公開延期ラッシュの危機に?

今年はシンエヴァ、コナンとヒット作が相次いで誕生し、映画業界に勢いが戻ってきたと感じられたのも束の間。緊急事態宣言が発令され、東京、大阪、兵庫、京都の4都府県では映画館が休業となりました。その影響で4月末から5月上旬までの公開予定作品は軒並み延期と、昨年を彷彿とさせるような状況になってしまっているのです。

実際映画館での感染リスクは低く、その証明もされているのですが、GWの大型連休において映画館に行くことから派生する“人の流入”を防ぐという意味で、短期集中ということもあり多くの映画館はこれに応じました。

しかし、新規感染者数の減少率は5%にも満たない結果となりました。そのため、宣言解除は5月末までに延期。そして、宣言の対象は愛知・福岡にまで拡大され、東京や大阪ではこのまま休業要請が続く方針に。

その状況を鑑み、全興連は休業要請に抗議する声明を発表。緊急事態宣言によって映画業界はますます深刻な状況に立たされています。

そこで、今回は今後の映画業界がどうなってしまうのか解説していきます。

そもそも全興連とは?

全興連は「全国興行生活衛生同業組合連合会」の略称で、この団体は会員である全国の映画、演劇、演芸のトップ達で構成されており、生衛法という法律に基づき組織された団体です。

生衛法は、国民に関わりのある業種の衛生水準を高めるのを目的に定められた法律で、その法律に基づき様々な業種に関する団体が存在しています。

漢字ばっかりでわからない…。

わかりやすく言えば、様々な業種にとってよりベストな環境を作りあげるための法律といったところでしょうか。

つまり、全興連は映画、演劇、演芸にとってよりベストな環境を作るために尽力している団体ということになります。

それでは実際にどのようなことをしているのかほんの一例を挙げておきます。

①全国の映画館に対する方針などの呼びかけ(コロナ禍においては時短営業の指示など)
②コロナ禍における感染防止ガイドラインの作成
③映画盗撮防止の協力
④映倫の定める「レイテング指定(PG12、R15など)」や都道府県の条例を守る

その他にもサービスの拡充や安定した経営を行うための活動をしています。

「ラーヤと龍の王国」の上映規模縮小などは記憶に新しいと思いますが、これは劇場側に非利益が生じないよう全興連の決めた方針に全国の映画館が動いた形となります。(※強制力はありません)

全興連の休業要請に対する声明の発表

冒頭でも触れましたが、今月6日全興連は緊急事態宣言解除の延期を受け、休業要請に対する声明を発表しました。

全文をご覧になりたい方はこちら(緊急事態宣言及び緊急事態措置の延長に対する声明)をご覧ください。

この声明では、全興連側は「人の流入」を防ぐための休業措置であったことを認識した上で、「今回の緊急事態宣言中の緊急事態宣言下の都府県の近隣では大幅な動員の上昇が見られるところです。」と、宣言地域に隣接する県の動員数が激増していることを強調。返って「人流の増加」に繋がる可能性があることを指摘しています。

その上で、映画館の感染リスクが非常に小さいことを強調し、「他業種に比しても非常に厳しい要請をされている現状の是正も訴えていきたいと考えております。」と、現状の休業要請に抗議する形を取っています。

また、演芸場が休業要請を無視したという報道を否定しつつ「一定の制限下の元で緊急事態宣言下でも営業を続ける陳情をして参ります。」と、時短営業などの対策を取って営業したい考えを示しました。

簡潔にまとめると、

・人流を抑えるための休業措置が、返って他県への移動を促してしまっている

・劇場は感染リスクも小さいので、時間短縮での営業をしていきたい(他県への人流の減少も見込める)

というような形で、十分な補償もない中休業を続けるのは厳しいということが伺えます。

今後の休業要請は?新作は公開延期に?

緊急事態宣言の影響で4月末から5月上旬までの新作が軒並み延期になってしまったことを考えれば、休業要請が据え置きのまま宣言解除が延期となった場合、再び多くの作品の公開延期は免れません。

しかし東京・大阪では、今まで通りの休業要請を続ける方針に。一方で、兵庫は平日時短営業で土日休業、京都・福岡・愛知は時短営業と、休業要請が緩和されています。

ただし、東京・大阪の2大都市での休業は大きなダメージであることに変わりありません。そのため引き続き映画館全体の25%ほどのキャパを削がれた状態となります。
2回目の緊急事態宣言では都市圏の時短営業のみの措置でしたが、その時期に延期した作品もあったことを考えると、今回も多くの作品が延期を余儀なくされる可能性も高いと見られます。

【主な5月12日~5月末までに公開が予定されている作品】
〈5月12日予定〉
「映画 賭ケグルイ 絶体絶命ロシアンルーレット」
〈5月14日予定〉
「ファーザー」
〈5月15日予定〉
「劇場版Fate/Grand Order 神聖円卓騎士キャメロット 後編」
〈5月21日予定〉
「機動戦士ガンダム閃光のハサウェイ」
「地獄の花園」
「いのちの停車場」
「劇場版 少女☆歌劇 レヴュー・スタァライト」
〈5月27日予定〉
「クルエラ」
〈5月28日予定〉
「クワイエット・プレイス 破られた沈黙」
「明日の食卓」
「HOKUSAI」
「100日間生きたワニ」

公開延期は、宣伝コストの増加公開日の再調整などマイナスな面が多くありますが、今の時期に公開するリスクはさらに大きなものとなります。劇場も配給会社も苦しい状況に立たされています。

個人的な予想としては、ほとんどの作品の延期が決定になってしまうのではないかと予想しています。というのも、宣言解除の目安が具体的に示されておらず今後の方針も不透明だからです。
そのため、今回のGWのように新規感染者数の減少が見込めなかった場合、7月末のオリンピック開催に向け、6月公開予定の作品に影響が出てしまう恐れもあります。

果たして、全国で安心して映画を鑑賞できる日はいつになるのでしょうか?

最後までお付き合いいただきありがとうございました!

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