コロナ禍以降不調続く「ドラえもん」映画、今年は再起の年となるか?再び50億円の大台へ…!

2022年の年間興収は2131億1100万円で前年比131.6%とコロナ禍から大幅な回復を見せた。

特に邦画全体の成績は、コロナ禍以降で最高なのはもちろんのこと、2000年以降で2番目となる数字だと言う。『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の大ヒット以降、100億円を越えるアニメ作品が続々と誕生し、映画館の再生に大きく貢献した結果の賜物だ。

この結果だけを見ればほとんどの作品がコロナ禍以前と変わらない水準にまで回復したと言えそうだが、未だにコロナ禍の低調期から脱却できずにいる作品も多い。

映画ドラえもん のび太と空の理想郷(ユートピア):映画作品情報・あらすじ・評価|MOVIE WALKER PRESS 映画
©藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 2023

中でも、3月3日にシリーズ最新作『映画ドラえもん のび太と空の理想郷』が公開となる「ドラえもん」シリーズは顕著な例だ。

直近10作品の興行成績を比較してみると、

公開年作品名興行収入
2012「のび太と奇跡の島 アニマルアドベンチャー」36.2億円
2013「のび太のひみつ道具博物館」39.8億円
2014「新・のび太の大魔境 ペコと5人の探検隊」35.8億円
2015「のび太の宇宙英雄記」39.3億円
2016「新・のび太の日本誕生」41.2億円
2017「のび太の南極カチコチ大冒険」44.3億円
2018「のび太の宝島」53.7億円
2019「のび太の月面探査記」50.2億円
~コロナ禍~
2020「のび太の新恐竜」33.5億円
2022「のび太の小宇宙戦争2021」26.9億円

2014年から右肩上がりを続け、最終的には50億円にまで到達。
コロナ禍前最後の作品『のび太の月面探査記』も最終興収は50.2億円と大ヒットを記録した。

その一方で、昨年公開された『のび太の小宇宙戦争2021(26.9億円)』の興行成績はその半分ほどの水準までにしか回復できていないことがわかる。

ファミリー層向けのアニメシリーズ作品として毎年春休みシーズンの筆頭候補となっていた「ドラえもん」シリーズだが、果たして一体何が起きているのか。

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他の作品は徐々に回復するも…?

コロナ禍の興行分析において、ファミリー作品に観客が戻ってきていないことはこれまで度々指摘されてきており、「ドラえもん」の不調もその一端に過ぎないと考える人も少なくないだろう。

確かに、パンデミックの最中であった2021年は映画館の閉館などもあり多くの作品が苦しい成績に終わった。

しかし、昨年の2022年は「名探偵コナン」「クレヨンしんちゃん」「プリキュア」など多くのファミリー向けアニメシリーズが既にコロナ禍前の水準にまで数字を戻している

ただ、苦しい状況に立たされているのは「ドラえもん」シリーズだけではない。「仮面ライダー」も低調なペースから脱却できておらず、夏はポケモン!でお馴染みの「ポケットモンスター」は2020年に公開された『ポケットモンスター ココ』以来新作の公開がない。

邦画アニメではないが「ディズニー」のアニメ作品も全世界と同様、コロナ禍以降ヒットには恵まれていないのが現状だ。

原因はコロナだけとは限らない

もちろんコロナ禍によるファミリー層の映画館離れは一つの要因としては挙げられるが、他のアニメ作品が調子を取り戻している以上、他にも何か原因がないと説明がつかない。

その原因として、先ほど触れた「ドラえもん」「仮面ライダー」「ポケットモンスター」には意外にも共通する点がある。

それは“テレビシリーズの放送時間変更”だ。いずれの作品もコロナ禍前に番組改編の影響で放送時間の変更が行われた。

「ドラえもん」金曜7時→土曜17時
「仮面ライダー」日曜8時→日曜9時
「ポケモン」木曜19時→日曜6時

この時間変更の最も大きなリスクは日々の習慣を破壊してしまうということにある。

多くのファミリー向けアニメ作品は「何時に◯◯が始まるから家に帰る」「◯◯が始まるまでに起きる」と言った日常における固定化されたスケジュールとしてファミリー層には深く浸透してきた。例えば「サザエさん」を見ると「明日から仕事(学校)か…」と想起する人も多いだろう。

各局ごとにターゲット層の変更や視聴率向上などのために行われる番組改編だが、その習慣化されたルーティンを破壊するということは、固定ファンを一定数減らすリスクが伴う。
現に「ドラえもん」のアニメシリーズの視聴率は引越し前に記録していた6.0%から現在は3.3%にまで大幅に数字を落としている。



台頭するジャンプ作品

『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』以降、次々に生まれた週刊少年ジャンプ派生の大ヒットアニメ作品。

『ドラえもん のび太の小宇宙戦争2021』は公開を1年延期するなど厳しい決断に迫られていた最中、『劇場版 呪術廻戦0』『僕のヒーローアカデミアTHE MOVIE ワールド ヒーローズ ミッション』『銀魂 THE FINAL』など多くのヒット作品が誕生した。

映画『鬼滅の刃』無限列車編
©吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

特に「鬼滅の刃」「僕のヒーローアカデミア」はファミリー層の集客がかなり強い印象だ。「ドラえもん」シリーズが不在だった期間、これらの作品に一部ファミリー層の関心が奪われてしまったという可能性も低くはないだろう。

こちらのサイトのデータによると1010人のファミリー層に映画の鑑賞頻度に関するアンケートを取った結果、「年に1回」が1番多く、2番目に「半年に1回」が多いという結果になっている。そして、この2つで全体の50%以上を占める割合となっている。

つまりファミリー層のほとんどは「年に1〜2回」ほどしか足を運んでいないことがわかる。

そうなってくると、ファミリー層がジャンプ作品など別の作品に1つでもファンが固定化した場合、既存の作品はファンを失うリスクがかなり高くなってくる。
また、毎年公開されるファミリー層向けのアニメとしては「名探偵コナン」シリーズが現在は一強と言った状態で、その2番手争いは熾烈なものになりそうだ。



今後の明暗を大きく分ける最新作

前作『ドラえもん のび太の小宇宙戦争2021』は1年の延期もあり、宣伝効果も例年に比べ分散してしまい、2022年公開ながらタイトルに“2021”とある違和感もあって、公開までのイレギュラーな要素から客足が伸びなかった可能性は捨てきれない。

しかし、今年は前作からのスパンは1年で、例年通りの春公開、ディズニーなど洋画の競合作品も少ないことから、ポテンシャルを最大限発揮できる環境が整っている。

映画業界がコロナ禍の苦しい状況からはほぼ脱した今、最新作『ドラえもん のび太と空の理想郷』がどれほどの売上を記録するのか今後の動向に注目したい。

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