最新作は200億円の赤字!?天下のディズニーが立たされてしまった”岐路”

近年はコロナウイルスの脅威も徐々に薄れ、だんだんとコロナ禍以前の勢いを取り戻しつつある映画業界。

GEM Partnersの調査によれば、今年2022年の映画全体の累積興収はコロナ禍以前(2017〜2019年)に比べ88%の水準にまで回復しているようで、苦しい状況が続いた映画業界も安堵のため息をついていることだろう。

そして、その中でも特筆すべきはやはり邦画アニメ作品の度重なるヒットである。「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」の歴史的ヒットを皮切りに、コロナ禍後は様々なヒット作アニメが生まれた

今年で言えば「ONE PIECE FILM RED」は現在187億円を突破し、東映歴代No.1ヒット記録を更新し続けている。「すずめの戸締まり」も新海誠監督No.1スタートを記録し大きな話題となった。そのようなヒットにも恵まれ、今年の邦画アニメにおけるヒット水準はコロナ禍前の120%超にまで達している。

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現在も大ヒット上映中の「ONE PIECE FILM RED」。

しかし、その一方で洋画アニメはコロナ禍前の62%水準といまいち回復できない状況が続いている。今年はイルミネーション制作の「SING シング ネクストステージ」「ミニオンズフィーバー」と大ヒット作品も多かった中、未だに厳しい状況を打開できていないのがウォルト・ディズニースタジオだ。2019年、100億円突破作品を3つ生み出した天下のディズニーだが、コロナ禍が明けて以降芳しいヒットに恵まれていない。

作品全体の興行収入は世界全体で見ると徐々に回復を見せているものの、コロナ禍以前と見比べるとその成績は2分の1以下となっており、その内の9割近くはマーベル作品が賄っているという状況だ。



新作「ストレンジ・ワールド」は200億円の赤字との推定も

11月に公開されたウォルト・ディズニースタジオ最新作の「ストレンジ・ワールド」。伝説的な冒険家一家が、不思議な世界で繰り広げる冒険を描いた作品だ。筆者は劇場で鑑賞したが、ディズニーらしく「家族」を題材にした作品で、未知の世界を舞台に親子3世代にわたる絆や葛藤を、謎の生物スプラットの可愛さもまじえながら暖かく描写されている。個人的にはCGのグラフィックも繊細で劇伴もポップさがありながら迫力もあり、良作に仕上がっていたと思う。

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約200億円の赤字と推定される「ストレンジ・ワールド」。

しかし、この「ストレンジ・ワールド」の赤字問題が最近ネットで大きな話題となっている。先月全米公開された「ストレンジ・ワールド」だが、オープニング成績はディズニーアニメ作品史上歴代2番目に低い数字(1番低いのは「ラーヤと龍の王国」だが、ディズニープラスでの有料配信があり、コロナ禍における映画館の営業制限も続いていた)となり、5日間で1885万ドルと言う結果に。アナリストの予想は3000万~4000万ドルだったため、それを大きく下回る形となった。さらに、ディズニーアニメ作品としては初のCinemaScore(※)「B」を記録するなど、観客の受けも芳しくないため、ここからヒットは難しいとされている。
(※公開初日の観客からの評価を「A+」~「F」でランク付けしたもの)

同性愛描写があることから中東・東南アジアでの公開ができないことも痛手となり、全世界興行収入も現時点で5000万ドル付近とかなり厳しい数字に。1億8000万ドルと言われている制作費を回収するには程遠い数字となってしまった。また、米メディアDeadlineによるとその赤字額は1億4700万ドルと予測されており、日本円にして約200億円という大損失を生む事態にまで発展していると言う。



コロナ禍後、勢いが戻らない原因とは

なぜこのような結果となってしまったのか。米メディアVarietyの記事で専門家は「この結果は、私たちがまだコロナの制限から回復しきっておらず、その制限に適応してしまっていることを示している」と語る。つまり、ここではコロナ禍における制限が大きな理由として挙げられている。
確かに、全米の映画市場がまだ完全に復活していないというのは事実だ。確かに、今年2022年の全米市場における年間興収はまだコロナ禍以前2019年の60%ほどにしか達していない。しかし、作品数も2019年の半分ほどとなっており、作品1本辺りの平均売上はコロナ禍以前と同じ水準まで回復しているというのもまた事実である。

特に、2022年は「ミニオンズ・フィーバー」「ソニック ザ・ムービー2 ソニックvsナックルズ」など、子供向けファミリー作品がシリーズ最高水準の大ヒット記録を打ち立たことは、ファミリー層が映画館に戻ってきたことを印象付けるニュースとして大きな話題となった。

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全世界1250億円以上を売り上げた「ミニオンズ・フィーバー」。

米メディアForbesは、このようなファミリー向けヒット作品が生まれている一方で、6月に公開されたディズニーピクサー作品「バズ・ライトイヤー」が赤字を記録してしまったことについても指摘。そして、ディズニー作品が相次いで赤字作品を生み出してしまっていることに対して、やはり配信サービスにおける新作映画の高速ローンチを大きな要因として挙げている。

ディズニーは元々「劇場公開」とディズニープラスで追加料金を払うことで鑑賞可能な「プレミアムアクセス」という2つの形式で作品公開を行っていた。しかし、海賊版の流出や映画館側の苦情を受け、公開後45日後にディズニープラスで見放題配信を行うというシステムへと遷移した。また、多くのピクサーオリジナル作品を劇場公開からディズニープラス配信作品へとシフトさせてしまった。それが、多くの観客層に対してディズニー作品へ劇場に足を運ばない習慣づけをしてしまった、と多くの米メディアでは客足減少の理由として解説されている。確かにこれは大きな要因として納得できる理由である。

ただし、個人的にもう一つ原因として考えられる要因として「知名度の低さ」があるのではないかと考える。これは個人的な体験の話になってしまうが、近年のディズニー作品はそもそも知っている人がめっきり少ないように感じる。特にディズニープラス見放題配信の枠に飛ばされてしまった近年のピクサー作品などは特段知名度が低い。「ソウルフル・ワールド」「私ときどきレッサーパンダ」などはもはや隠れた名作と化してしまっている。

やはり知名度獲得にはCMなどの宣伝活動が重要になってくるが、ディズニーはディズニープラス自体の宣伝に広告費を使う余り、作品自体の宣伝費が抑えられているのではないだろうか。例えば「アナと雪の女王2」「トイ・ストーリー4」などは様々な企業とタイアップをし、街中の様々な場所で見かけることも多かったが、近年はそのような光景を目にすることはあまりなくなった。Deadlineの推定では「アナと雪の女王2」のP&A費(広告費)1億4500万ドルに対し、「ストレンジ・ワールド」のP&A費は9400万ドル。また「ストレンジ・ワールド」Twitter公式のフォロワー数は3300人と「アナと雪の女王」の2%水準とかなりの少なさで、知名度も絶望的だ。

このように海外でも大きく取り上げられている赤字問題だが、この問題はアメリカに限った話ではなく、日本でもディズニー作品の売上減少は数字として顕著に表れている。「ストレンジ・ワールド」は2億円の突破すらままならず、わずか3週間で公開を終える劇場も多い。「バズ・ライトイヤー」も、3年前に「トイ・ストーリー4」で100億円突破を果たしたにも関わらず、最終興収は12億円に留まった。日本ではマーベル作品もあまりヒットする傾向になく、ディズニープラス配信を巡る映画館との軋轢もその深刻な状況に拍車をかける形となってしまっている。

しかし、一方のディズニープラスは非常に好調なペースで会員数を増やしており、なんとその数はわずか3年半で1億6420万人を越えている。Netflixは2億人達成まで15年という月日がかかったことを踏まえると、驚異的な成長であることは一目瞭然だ。ただ、今後本当にディズニーは配信サービスを軸とした経営方針になってしまうのだろうか。

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