【なぜ?】全世界135ヵ国で首位「アバター」続編、日本”のみ”3位スタートのワケとは一体…?今年一番の謎を徹底考察

ここまではあくまで憶測の範疇で失敗の要因を探ってきたが、ここからは既存のデータを使いながら、ある程度説得性のある要因を導いていきたい。

①自国コンテンツが強すぎる日本

なぜ日本で洋画作品が売れづらくなっているのか、その最も大きい理由は日本の自国コンテンツ、つまり邦画の存在感が非常に大きいと言うことが挙げられる。

同じアジア圏である韓国と比べてみるとその差は一目瞭然だろう。(赤色が自国コンテンツ)

このように日本は他の国と比べて、圧倒的に自国コンテンツに特化していることがわかる。つまり、この年末年始シーズンは他の国であれば「アバター」が独り勝ちできるような状況でも、日本は既に自国コンテンツで飽和してしまっているため、観客の心に付け入る隙がなかったと考えることができる。



②ライト層はアニメ映画で既にお腹いっぱい?

いくら自国コンテンツが強力と言っても、洋画作品が全く売れないというわけではない。しかしながら、100億円レベルの売上を生み出すには普段映画を見ないライト層を取り込むことが重要になってくる。

そこで下記のグラフを見てみると、年に1回以上映画館に足を運ぶ人は全体の半分ほどであることがわかる。

こちらのサイトより引用

さらに、そのうちの6割が年に1〜2回しか映画館に足を運んでいない。つまり、この6割のライト層をいかに取り込めるかが100億円の大台に乗れるかを左右するわけだ。それを踏まえ今年の作品を振り返ってみると、100億円を越えた作品は「劇場版 呪術廻戦 0」「トップガン マーヴェリック」「ONE PIECE FILM RED」と既に3本で、達成が確実視されている「すずめの戸締まり」も含めると4本になる見込みとなっている。もちろん100億円越え作品の本数が4本を越えるのは2019年ぶり史上3回目の大快挙ではある。

しかし、それと同時にライト層は該当の作品を中心に今年は既に1〜2回以上足を運んでおり、今年鑑賞する分はもう消化し終わっている、と考えることもできる。特に「すずめの戸締まり」はつい先月公開されたばかりで、今月も続けて映画を鑑賞するライト層は少ないと考えられる。

また、156億円の興行収入を記録した前作「アバター」が公開された2009年は、100億円を越えた作品も「アバター」のみ。それも今年2022年と大きく異なる点の1つだ。

画像
(c)2022「すずめの戸締まり」製作委員会

実に、アニメ作品が1年に3本も100億円を越えるという事態は未だかつてなかったことで、今年2022年はコロナ禍を通してライト層の趣向がアニメ作品に傾いていることを裏付ける年となったと言っても過言ではないだろう。



③進む若年層の洋画離れ

コロナ禍以降、ハリウッド作品の供給はやはり例年に比べてかなり少なくなっており、今年全米公開された作品の数はコロナ前である2019年の約半数となっている。そんな中、アニメ作品が猛威を振るっていることもあり若者の洋画離れが少しずつ進み、先程も触れたように今年はシリーズ作品も「ジュラシック・ワールド」「ファンタスティック・ビースト」「ミニオンズ」など前作に比べ大きく数字を落としているものが多い。

下記のグラフは映画を鑑賞する人口を表したものだが、20代が最も映画鑑賞に対してアクティブなことがわかる。つまり、若年層をいかに取りこむかが映画の興行において大きなキーポイントとなる。

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「トップガン マーヴェリック」の特大ヒットでことなきを得ている洋画作品だが、年齢層に注目してみる。そこで、この下の表を見ると15〜29歳の割合はわずか15%ほどにとどまっていることがわかる。つまり、30代から上の主に年配層が洋画作品を支える形となってしまっているのだ。

こちらのサイトより引用。右下の枠に位置する「トップガン マーヴェリック」

そして、今作は作品の肝でもある3D上映が年配の方にとっては目の負担になることや、年配層に好まれるスター俳優を軸にしたスター・システム型の作品でもないことからその心を掴むことがかなり難しくなっていると考えられる。つまり、洋画を支える年配層を取り込めなかった今作の数字は若年層の洋画離れが深刻化しているという事実を叩きつける結果になったと言えるだろう。



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この結果をディズニーはどう受け止めるか

ここまで考えられる要因をまとめて来たが、日本”のみ”ヒットしなかった要因を考える上で、日本にしかない映画業界の特徴を考えたとき、やはり自国コンテンツの強大さ若年層の洋画離れが最も突出している部分なのではないか考えられる。しかし、海外作品でヒットしている作品はある程度ヒットしているのも確かで、やはり今作がここまで予想を下回るスタートを記録したのには他に理由があるのではないかと、さらに勘ぐりたくなってしまう面があるのも事実だ。ただ、冒頭でも触れたように映画のヒット分析に明確な答えはないのも事実だ。

しかし、それこそがヒットする映画を作るという観点において、様々なチャレンジを試みる業界のハングリー精神にも繋がり、映画の可能性を広げてくれている。話がやや飛躍してしまったが、今作の失敗を配給の大元であるディズニーはどう受け止め、今後にどう繋げていくのか来年の動向にも注目したいところだ。

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