【なぜ?】全世界135ヵ国で首位「アバター」続編、日本”のみ”3位スタートのワケとは一体…?今年一番の謎を徹底考察

12月16日、前作から13年の満を持して公開された「アバター ウェイ・オブ・ウォーター」
批評家の前評判はすこぶる高く、アナリストも大ヒットを予測するなど、公開前から歴史的大ヒット確実の流れを漂わせていた。そして実際に蓋を開けてみても、しっかりその盛り上がりを裏切らない大ヒット記録を達成して見せた。3日間の全世界オープニング成績は4億4160万ドルと、日本円にして約600億円に迫る驚異的な数字だ。これは2022年に公開された作品として2番目に高い数字となっている。

(C)2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.

さらに全世界135ヵ国でNo.1スタートを記録する大ヒット旋風を巻き起こし、インドやドイツなど一部の国では歴代トップクラスの成績を記録。そして、もちろん日本でも大ヒット確実と思われていいた今作だが…、まさかの3位スタートを喫する結果となった。

3日間のオープニング成績は6億4637万5020円で、一般的な洋画作品であれば十分な数字だが、前作「アバター」は156億円を記録したビッグタイトル。公開スクリーン数も1466と、「アメイジング・スパイダーマン」の1092を越え日本歴代最大規模となり、映画業界の期待がその数字にも現れていた。しかし、結果的に最終50億円すら厳しいとも言われるスタートとなることは誰も予想できなかっただろう。また、日本はプロモーションを行うワールドツアーの開催国の1つでもあったことを踏まえると、なおさら製作サイドにとっては信じ難い結果だ。

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唯一「アベンジャーズ」が敗北した国、日本

このような事例は過去にもあった。2019年に公開された「アベンジャーズ エンドゲーム」が公開2週目も全世界でNo.1ヒットを続ける中、日本でのみ「名探偵コナン 紺青の拳」に首位を奪取され、世界で唯一2位を記録したという事例だ。この話題は海外でも大きく取り上げられ、日本がアニメ大国であることを世に知らしめた。

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(C)2019青山剛昌/名探偵コナン製作委員会
(C)Marvel Studios 2019

他にもNetflixの作品ランキングで「ストレンジャーシングス」が全世界で1位の週間視聴数を記録する中、日本でのみ「スパイファミリー」が首位を譲らなかった。実際、今回「アバター ウェイ・オブ・ウォーター」は3位スタートとなったわけだが、1位は「THE FIRST SLAM DUNK」、2位は「すずめの戸締まり」とどちらもアニメ作品となっている。

この結果だけを見れば、確かに日本がアニメ大国だから「アバター」はヒットに至らなかったと説明がつきそうなものだが、もちろんそれも要因の1つとしては考えられるものの、今回の件についてはそうも単純な問題ではなさそうだ。というのも、「アベンジャーズ」や「ストレンジャーシングス」こそシリーズ当初から日本での人気は控えめだったが、「アバター」に関しては1作目が156億円の大ヒットを記録し、2009年最高興収に輝いたという事実があるからである。また、9月末に行われた1作目のリマスター上映も好調な客入りだったため、余計に理解し難い結果だ。



原因を巡り、ネット上では議論が過熱

映画の売上分析は今日も様々な場所で行われているが、明確な答えやセオリーを生み出せないというのがこの業界の難点。だからこそ、成功や失敗がありそこが面白いポイントではあるのだが、多くの業界人はこの結果に大きく頭を悩ませていることだろう。

観客の興味は流動的で、様々な事象も複雑に絡んでくる。そのため、統計やデータだけその事象全てを把握することは難しい。つまり、明確な要因はこれだ!と断言することは容易ではない。
ただし、今作に関しては専門家だけでなくネットでも多くの憶測が飛び交っている。真偽はともかくとして、ここではその可能性として挙げられた要因をまずリストアップしてみる。

①上映時間問題

今作の鑑賞ハードルが高い理由として挙げられるのが、192分という非常に長い上映時間である。
個人的にもトイレが心配になってしまう尺ではあるが、腰の弱い人にとっては3時間以上同じ姿勢で座るというのはかなり負担もかかる。

とは言っても、最近満席も続出し話題となったインド映画作品「RRR」も上映時間は3時間で、ジェームズ・キャメロンの大傑作「タイタニック」も上映時間は3時間を優に越える。それでもヒットを成し遂げたことを踏まえれば、今作の失敗をこの理由だけで説明できると考えるのは難しい。



②3Dに偏り過ぎ問題

今作が最も売りにしているポイントの1つとなっている映像美。特に強みとなっているのはHFR(ハイフレームレート)という最新技術を用いた滑らかな映像だ。ハイフレームレートとは、世界標準の1秒当たり“24”とされているフレーム数(画像数)を、1秒当たり“48”と2倍のフレーム数で撮影することで、よりリアルな映像を実現するという技術。こちらは出力にもかなりの負荷がかかるものとなっており、上映を中止する劇場もあったほどだった。

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(C)2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.

そのため、その映像美を最大限堪能できるDolby CinemaやIMAX、3D上映などが映画館やファンを中心にプッシュアップされた一方で、相対的に2D上映の価値が著しく落ちてしまった
さらに、3D上映となると鑑賞料金も高くなってしまうため鑑賞ハードルをますます上げる要因になってしまったとも考えられる。

③洋画離れ問題

コロナ禍を通して洋画離れも大きく加速した。今年は「トップガン マーヴェリック」の大ヒットを受け、昨年から洋画作品は大きく躍進したが、それでも今年多く公開されたビッグタイトルの続編作品は前作から軒並み興収を落としていることもあり、洋画全体の興行成績はコロナ禍前の水準には戻り切っていない。

また、今作には反捕鯨を示唆する描写もあり、デリケートな問題に強く意見を示す内容は少なからず抵抗を示す人もいるようだ。

④知名度低い問題

よくSNSで見かけるのは、全く広告を目にしなかったと言う意見。ただし、これに関しては駅広告、Youtube広告、TVCMなど多くの場面でアプローチがなされていた。駅広告は新宿、池袋、大阪、梅田、名古屋、博多など単価の高い都市圏の駅を中心に展開されており、TVCMはワールドカップの合間にも流されていた。

それでも、興味を引けなかった理由には“続編”という要素が強く作用しているかもしれない。と言うのも、特に10代〜20代の若年層は13年前の前作を知らない人も多い。そこに13年ぶりの新作と銘打っても興味を惹くことは難しいだろう。また、地上波で前作が放映されることもなく、配信形態がディズニープラスのみだったという点も痛い。



⑤俳優のスター性問題

今年136億円を越える大ヒットとなった「トップガン マーヴェリック」。この作品の主役であるトム・クルーズはデビュー当時から日本でアイドル的な人気を誇り、今作も当時からのファンである40代以上を中心に多くの観客を動員した。トム・クルーズのデビューした1980年代はいわゆるハリウッドスターが作品の顔を飾り、作品を選ぶ基準は「俳優」の時代だった。俳優を花形に置くこの興行スタイルはスター・システムとも呼ばれ、かのチャールズ・チャップリンが活躍した1920年代が始まりと言われている。

(C) 2022 Paramount Pictures Corporation. All rights reserved.

近年はマーベルやスターウォーズなど作品の「ブランド」が判断基準にはなってきているが、今年の「トップガン」のヒットはこのスター・システムが大きく作用したと考えられる。一方で「アバター」の主演サム・ワーシントンはトム・クルーズに比べると一般的にな知名度はやはり低いものになっており、作品の特性上俳優の素顔もよくわからない。このスター性という観点も相対的要因としては否定できない。

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